【感想】朗読劇「武士とジェントルマン」2023/2/2 19:00
観に行って良かった!
と、客電がついてすぐ思うくらい良かった。
お芝居が物凄く良かった。加えて、脚本演出が私の肌に合いすぎた。
■朗読劇「武士とジェントルマン」
原作:榎田ユウリ
脚本・演出:末原拓馬(劇団おぼんろ)
音楽:HIDE×HIDE&ワキマル・ジュンイチ
2023/2/2 19:00
隼人:中島ヨシキ
女性兼ね役:福圓美里
男性兼ね役:矢野奨吾
ストーリーについてはまだ公演中のため割愛。
(2/5マチネも観るので、そちらで書くかも)
ネタバレなしで言うと、コミカルに話は進みつつも、みんなそれぞれリアルな、人間らしい悩みを抱えている。
およそ人には触れられたくなかったり、おそらく自分でも触れたくないような過去や悩みをそれぞれ持っている。
それをゆっくりと優しくほどくような、優しいお話だったなと思う。
平日夜の公演。当日券もあり。
これ、本当にもっとたくさんの人に観てもらいたくて……いや、まだ公演は残っているので見てほしい……!と思い、こうして急いで書いています。
好きな役者が出ていたり、作品や作家さんのファンだったり、朗読劇というものが好きだったり……何かピンとくるものがあればぜひ観てほしいと思う。
演出の話。
キャストは全員ヘッドセットで、歩いたり、向かい合ったり背中合わせになったりと、本を持ったまま舞台をやっているのに近い。
隼人とアンソニーが喋るとき、ヨシキさんがじっと岸尾さんの目を見たまま時折台本に視線を落とすような感じで喋っていて、相槌を打ったり、時折口を動かして感情表現してたり……とにかく、アンソニーの「セリフを聞いている」ではなく「話を聞いている」ように見えて、より没入感が高まった。
舞台装置は人二人が入るくらいの大きな木の枠が二つ降りてくるもの。
日本家屋の木の柱であったり、別場面が切り取られている枠であったりといった使われ方だったイメージ。
そして行灯がいくつか。
文字で書くと質素に思えてしまうかもしれないけど、ライティングが素晴らしくて本当に美しい画だった。
https://twitter.com/bushigen_stage/status/1620414885787230210?t=DZC1D26hIL97fVb6k2p-QQ&s=19
日差しが差し込むような光だったり、真っ赤に染まったり、暗い中、行灯だけの光で二人が語り合ったり……光の演出も丁寧でよかった……。
音楽の話。
生演奏……!キーボード、尺八、三味線。
しかもBGMとしてだけじゃなく、きちんと音楽が主役になるシーンもある。最高。
私は朗読劇で音楽を聞く時間が好きで、お芝居の余韻を更に揺らし、増幅し、心地よくしてくれる時間だと思っている。
次の展開に対して不安が高まったり、何らかの解決があって安堵に浸ったり……。
音楽を聞く時間って心が休まるというか、頭の中や心の中が整理される時間な気がするので、お芝居の間でそういう時間があると余韻をさらに良く噛み締められていい。
余談だけど、最初三味線にアンプのコードを繋いでるのが見えて、エレキ三味線とかあるんだ……と驚いた。
脚本の話。
そもそも原作が面白いんだけど、朗読劇として立ち上がらせたときに面白いかどうかは脚本に拠ると思っていて……結果、うわぁ最高だ!と思いました。
芝居のテンポが心地よいのももちろんあったけど、「激しさ」の入れ方がものすごくよかった。
たまに他の朗読劇で、このセリフや地の文じゃ役者がどう緊迫感のある芝居しても間延びするじゃん……と思うことがある。
それがなかった。セリフや場面の切り方とか、緊迫感が高まって高まってという演出……本当にドキドキした。
表現として正しくないかもしれないけど、舞台を観ているみたいだった。それくらいのめり込んで観てしまった。
お芝居の話。
ヨシキさん@隼人、ちょっと若年寄っぽいところとか好演だな……と思うし、まず、この演出で芝居するところを観られて本当によかった。
表情とか立ち居振る舞いでもお芝居できる人なんだなぁと思う。
目力がすごいので目の演技も際立つ。
本当にドキッとさせられたシーンがあったので……表情と声で、苦しさが伝わってきて喉がぎゅっとなった。
もっと見ていたかったなぁ……5日も見るんですが。
相手によって少し変わりそうだなとも思うのでそれも楽しみ。
岸尾さん@アンソニー。
私は岸尾さんの優しいお兄さんめいたお芝居が好きなので、アンソニーが隼人に優しく語りかけるところは特に聴き入ってしまった。
あとアドリブ……岸尾さん、相手が受けきれないと分かったら自分ひとりでめちゃくちゃになり自分ひとりで戻ってくるか適度に切り上げるかする信頼の置けるボケ手(?)だと思っているので、際限なくボケ始めたのを見て、これはヨシキさんが受けきれるという信頼があるな…?と思った。笑
福圓さん@女性兼ね役。
クロジの舞台を観ている気分に一瞬でなるくらい引き込まれた。本当に台本読んでたか?と思うくらい前見たり他の演者に向かって喋っていた印象。
福圓さんが兼役やると見てこれはもう安心感がすごい……と思ったし実際に最高だった。メリハリがつく。好きです。
矢野さん@男性兼ね役。
どこからその声が……?と思うくらいいろいろな年齢のお芝居をしていて本当にすごい。一部女性役もあったけど違和感がない。
矢野さんのお芝居、ニュートラルだなぁと思う。こんなに癖がない老人・少年・不良・チャラ男ができるのすごすぎませんか……?
本当に癖がない……すごい……。安心感。
余談。
いろんな朗読劇に行っていろんな演出を見てきたと思うけど、その度に朗読劇として最善の演出って何だろうと思ってた。
単に音を聴くだけならドラマCDでいいし、生で演じているのを聞きたいんだったら極論、舞台上は暗闇だっていい。
動きや見た目、衣装までを含めて形作るなら朗読劇ではなく舞台にすればいいんじゃ?とか。
そんなことを常々思っているので、脚本演出の末原拓馬さんのブログの言葉がとても刺さった。以下引用です。
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朗読劇だけれど、音だけを聴かせるならドラマCDでいいわけで、演者を生で見たいだけならイベントでいい。そうじゃなくて、やっぱり、劇として立ち上げたい。音楽と光と美術、そして物語にこだわる。
https://ameblo.jp/obonro/entry-12786298108.html
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今日の武士ジェンの朗読劇を観て、そしてこの文章を読んで、私の中での朗読劇の評価軸は「作品に誠実であること」なんだな、と気付いた。
これは、今回で言えば「武士とジェントルマン」という作品に対してと、もう一つ、「劇場でおこなう劇」としての作品に対して誠実である、ということ。
その物語の伝えたいことを伝えるために脚本をどうするか。そしてそれが伝わるための舞台演出はどうすべきか。
それらが誠実に考えられていると感じたときに、そして役者陣の良い演技と音楽とライティング、もろもろが全て組み合わさったときに、良い朗読劇だったなぁ、と思うのかもしれない。
本当に素晴らしかったなぁ。
まだ余韻に浸っている。